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物理1(その1)

夏休み本番ですね。夏休みと言えば、「恐竜展」でしょうってちょっと強引すぎましたかね。まあ、でもここ何年か、夏休みにはどこかしらで恐竜展をやっているような印象がありますがいかがでしょうか。また、今年はあのスピルバーグのジュラシックパークの完結編も上映されていますし、この夏の気温と同様に子供たちの恐竜大好き熱も上がっていくものと思います。さて、そのジュラシックパークの恐竜ですが、彼ら、彼女らはみな物理的にいうと存在し得ないといえるのです。いや、恐竜たちが現代によみがえることに関しては理論上可能なのです。もっとも、蚊が吸った恐竜の血液のDNAが壊れていなければの話ですが。そうではなくて、ジュラ紀、白亜紀にかけての恐竜たちのことです。実際、化石やら骨格標本までありますから現実に存在したはずなのですが。いやいや、だからあくまで物理的にです。っというわけで、検証してみましょう。そこで、まず恐竜代表として、恐竜界のスーパースター、学名ティラノサウルス・レックス(以下、Tレックス)について見てみましょう。

Tレックスは体長12メートル、発見された骨格から体重は5トン前後であると考えられます。体重は我々が知る象と同じくらいで、体長は象の2倍強といった大きさですかね。まあ、“でかい”ですよね。ってここで終わりじゃなくてその体形について見てみてください。

(写真:子供向けのとびだす絵本みたいなのしかなくてすみません)

注目すべきは、その足です。象のそれは、付け根から先までほぼ円筒形で、同じくらいの太さであり、しかも4本で5トンの体重を支えているのに対して、Tレックスの足は、2本でしかも体の大きさに対して細すぎると思いませんか?これって、早く走るための足じゃないかと思うんですが、でもこの足では5トンの体重を支えられませんし、ましてや走るなどとんでもないことのように思います。しかし現実には真逆のことが起きていました。レックスって、王者の意味だそうです。つまり、Tレックスはあの体形で縦横無尽に走り回り、食べたいだけ食べてあの巨体を獲得し他の生物から恐れられてまさに王者のようにふるまっていたことがうかがわれます。ただし、古生物学者によればです。初めの方で言ったように物理的には、つまり物理学者によればそんな生物が存在したこと自体幻想であるということになるのです。どいうことなのでしょうか?

“さすが恐竜、筋肉も骨も我々人類が知り得ないような構造のものを持っていた”っという答え以外のたった一つの『解』が「重力」なのです。

 さて、ここで白状しますが、上の文の内容はある論文を基にしています。論文といっても実際の学術論文ではなく、ある小説の中で論文という形で書かれている章の内容なのです。その小説は我が広島県が生んだミステリー界の巨匠島田荘司の「アルカトラズ幻想」です。ここで述べられている内容は、恐竜が活躍していた時代の地球の自転速度は今よりもずっと速かったということなのです。詳しいことを言うとネタバレになりそうだし、これ以上長くなるのも避けたいので、結論だけ言います。重力は万有引力から自転による遠心力を引いたものなので、回転速度が大きいと遠心力も大きくなり、その結果重力が小さくなります。Tレックスが王者のように地上を闊歩(闊歩:威張って思うままに行動すること)できたのはこの環境のおかげといえると思います。ただ、この論文の結論には具体的な根拠はありません。しかし、状況証拠を精緻(せいち:極めて詳しく細かいこと)に積み上げ、見事なまでに論理的に結論に導いているのは島田荘司の真骨頂(しんこっちょう:本来の実力が発揮されたの意)でしょう。彼の大々ファンの私としては、この結論を全面的に支持したいところです。最後に標題の「物理」に見合うことをして終わりにします。島田はこの論文の中で、(小説中では、バーナード・コイ・ストレッチャーという名の大学院生が書いたことになっています)“地球が木星並みに速ければ”と言っていることから以下のような計算をしてみました。ただし、引力から遠心力を引くといっても緯度がある時はベクトルの引き算になるので、三角比の余弦定理を使って解くことになり、非常に煩雑になります。それで赤道上(緯度0;cos0=1)のこととしました。重力加速度も10(単位省略)、木星の速度は13056m/sとして計算した結果(写真)、体重5トンのTレックスは約2,8トンになりました。筋力を維持したまま体重がこれだけ減れば、運動能力はかなり上がることは確かでしょうね。もし世界がこのような環境だったら、この間あった世界陸上のハイジャンプなどは背面跳びじゃなくて正面跳びで楽々世界記録が出せたりして、などと考えると何だか楽しそうですね。でも、その世界にはきっと…奴らがいます。 

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